今年の1月3日に発見されたレモン彗星C/2025 A6 (Lemmon) が先週に予想外の急増光を見せ、現在最も明るい彗星になっています。と言っても光度は約11等で、小型双眼鏡や小口径望遠鏡では眼視での観測が困難なレベルです。それでも急増光前の予測では17等程度とみられていたので、6等級(≒250倍)も明るく観測されていることになり、これはもう期待せずにはいられない状況になっている訳です。なお、現在は地球の公転軌道の外側に相当する宇宙空間にありますが、今年11月8日に近日点(軌道上の太陽最接近ポイント)を通過する予定で、金星より太陽に近づく軌道を辿っているということで、肉眼光度になるポテンシャルを持っていそうです。
実際の天空上で今はふたご座の北東部に位置し、明け方の東北東の空低くに見える状況です。今月からの日の出90分前における地平高度,光度,太陽離角,日心距離の経日変化をまとめた天体グラフは次のとおり。
AstroArts社ステラナビゲータにて作成
9月末あたりまで薄明開始時の高度が上がっていきますが10月に入ると太陽との離角が日毎に小さくなり、光度は上昇するものの観測条件は悪化しそうです。ちなみに10/18の薄明開始時における見え方のシミュレーションがコレです。
AstroArts社ステラナビゲータによるシミュレーション(10/18 04:26)
※尾の実長を0.1AU(太陽-地球間の平均距離の1/10)と仮定
彗星下の数字の1/10が予想光度
紫色の枠はフルサイズセンサー搭載カメラ+135mmレンズの写野
この時の彗星の地平高度は約12度です。実はこの日の前後2~3日くらいの期間は明け方の東天だけでなく夕方の西天でも見える状況になります。同日の薄明終了時における見え方のシミュレーション結果も下に示しておきます。
AstroArts社ステラナビゲータによるシミュレーション(10/18 18:28)
この時の彗星の地平高度は9.5度程度です。この日以降は夕空での観測条件が良くなっていくので、日没90分後における天体グラフも示しておきましょう。
AstroArts社ステラナビゲータにて作成
グラフを元に詳しく調べると薄明終了時の高度が最大になるのは10/28で、その時の見え方のシミュレーションがコレです。
AstroArts社ステラナビゲータによるシミュレーション(10/28 18:18)
この時の地平高度は約17度。彗星の明るさは4等台前半に達する見込みなので、10月末から11月初頭がこの彗星の一番の観測好期になりそうです。尾がどの程度伸びるかは正確には予測できませんが、このシミュレーションの通りになった場合、撮影ではフルサイズセンサー搭載カメラに焦点距離100mm前後の中望遠レンズの組合せが妥当な感じです。標準レンズでないと尾の全体像が捉え切れないほど長く伸びてフォトジェニックな姿になってくれたら嬉しいんですけどねぇ。なお、11月後半になると南の空へと移動してしまい、太陽との離角も小さくなってしまうので、日本から観測できるのは大体11/20くらいまでと思われます。
ところで、この彗星の最大光度については一部でマイナス2.5等に達するとの予測が出されていたりしますが、さすがにそこまでは行かないだろうと個人的には思います。毎度のことながら彗星の振る舞いは水物ですから、完璧な光度予測は困難であり、逆に途中で崩壊して消滅する可能性だってゼロではありません。この先も様々な予想が出てくると思いますが、一喜一憂することなく実際の観測結果だけに注目したいと思います。